住友倉庫の挑戦

アーカイブズ事業拡大の陰には、若き社員たちの挑戦があった アーカイブズ事業部 アーカイブズ営業課 江波戸 資季/ 法学部卒 2004年入社

アーカイブズ事業拡大の陰には、若き社員たちの挑戦があった

アーカイブズ事業部 アーカイブズ営業課 江波戸 資季 / 法学部卒 2004年入社
行く手をさえぎる様々な障壁

かつて、住友倉庫のアーカイブズ事業は、家財道具や美術品等の「非商品」を扱う「トランクルーム事業」の1ジャンルであり、事業規模も決して大きなものではなかった。その後、情報化の進展とともに、アーカイブズ(文書、電磁記録等、情報記録媒体の保管)サービスの潜在的な顧客ニーズは高まりを見せ、徐々にトランクルーム事業の中心へと成長していったが、10年前の時点では、自社のオフィスや倉庫、工場を書類等の保管場所として利用する企業も多く、セキュリティ等の観点から機密情報を含む文書(機密文書)の適正な情報管理が課題となっていた。
住友倉庫は、機密文書を扱うに足る高いレベルの情報管理設備や即座に保管場所を検索できるシステム、緊急時に短時間で手元に届く配送体制を整えれば、企業の情報管理強化とアーカイブズ管理コスト削減を同時に満たすことができるとして、2007年に業界でもいち早く会社全体のアーカイブズを総合的に取り扱う事業部門を設置。アーカイブズに特化した専用倉庫の建設や、情報セキュリティをマネジメントする国際基準ISO27001認証を取得し、アーカイブズ事業に力を入れた。その結果、アーカイブズサービスの事業規模は急速に拡大。取扱量はこの10年で3倍近くに拡大し、特にここ数年の伸びは目覚ましい。こうして順調に拡大を遂げたアーカイブズ事業だが、軌道に乗るまでには超えなければいけない様々な壁があった。

Challenge Point Challenge Point

ISO取得とWEBシステムの構築に携わり、ゼロから作り上げるDNAが刷り込まれた

ISO取得とWEBシステムの構築に携わり、ゼロから作り上げるDNAが刷り込まれた

私はもともと首都圏の法人企業に対するトランクルーム貨物の集貨営業を担当し、法人が持つ文書や磁気テープ、映像テープといった情報記録媒体、家財道具、美術品などの貨物を扱っていました。トランクルーム事業は当社の中では歴史が浅いものの、大きくその取扱いを伸ばしている成長分野であり、その成長の原動力となっていたのが文書・磁気テープ等の情報記録媒体でした。
2005年に個人情報保護法が施行されると拡大はさらに加速。法人文書には高い機密性を持つ個人情報が多く含まれるため、企業は保管倉庫に高いレベルのセキュリティを求めるようになったのです。個人情報保護法が施行された翌年、トランクルームでも情報記録媒体のシェアが増えつつあったため、アーカイブズを専門に取り扱う事業部門が設置され、私もその一員となりました。
ここで私がカを入れて取り組んだのは、ソフト面の充実です。ハードである施設がいくら堅牢であっても、情報を守るシステムや人の教育などソフト面がずさんであれば、セキュリティは無いも同然となります。事業を確立するには客観的なセキュリティ基準を満たす必要があるため、情報セキュリティに関するISO27001認証を全国12カ所のアーカイブズ事業の拠点で取得するための事務局が設置され、私もメンバーとして認証取得に取り組みました。
このとき顧客向けの文書管理WEBシステムリニューアルのプロジェクトにも携わりました。営業サイドのまとめ役として企画に加わり、仕様の検討から操作性の確認、各営業担当者への研修、販促ツールの作成までまさに「何でも屋」状態で取り組みました。その結果、顧客の要望に柔軟に対応できるサービスとなり、売上拡大に貢献できたと自負しています。ISOにしろ、WEBシステムにしろ、ゼロから立ち上げる仕事に関われたことは、今の自分をつくる上で大きな財産になりました。「無いものは自分で動いて作り上げる」というDNAが刷り込まれたのがこの時期だったように思います。

Challenge Point Challenge Point

独学で製薬会社向けの文書保管体制を構築。それが突破口となり大型案件を受注

独学で製薬会社向けの文書保管体制を構築。それが突破口となり大型案件を受注

数年後、営業担当に戻り、全国規模の案件や新規サービスの企画営業を担当することになりました。
私はISO認証やWEBシステム構築に携わった、「ゼロから作り出す」経験を生かし、顧客のニーズに応じたサービスの提案に力を注ぎました。そのひとつが、製薬会社が保管するGLP資料の管理サービスです。GLPは厚労省が定める医薬品開発に関する基準の一つで、開発に関する資料(試験記録)の法令に基づいた厳格な管理を求める等、数ある基準の中でも最も厳しい内容となっています。ある大手製薬会社が当社への文書記録の集約保管を決めたのですが、当社にGLP資料を管理する体制がなかったために、話はいったん白紙に戻ってしまいました。
GLP資料は全体の文書からするとごく一部にすぎませんでしたが、それが預かれないために、すべてが御破算になってしまうのは悔しくて、何とかしてその問題をクリアしたいと思いました。コンサル会社を探しましたが、そんなニッチなコンサルをしてくれるところは見つかりません。
諦めかけていたところ、上司の「失敗してもいいからチャレンジしてみなさい」のひと言にも背中を押され、独学で取り組んでみることを決意し、まずは書店でGLP資料保管に関する専門書を買いあさることから始めました。

851ページにもなる専門書を必死で読み込み、通勤電車の行き帰り、平日の夜、休日のすべてを勉強に費やしました。それでも参考文献では限りがあるため、ダメモトで製薬会社の担当者に「一から体制を立ち上げたいので協力していただけませんか」と頼んだところ、「よく勉強されましたね。やる気があるなら協力しましょう」と言ってもらうことができ、アドバイスをもらいながら、GLP資料保管のための体制づくりに取りかかりました。試行錯誤の末、半年以上かけて手順書や体制が整い、無事、その会社の文書記録を一括管理させてもらえることになったときの喜びは言葉ではあらわせないほどでした。後押ししてくれた上司や苦労を共にした同僚達の、努力と諦めずやり遂げる忍耐力の賜物だと思っています。その後、他の複数の製薬会社からも同様の引き合いをもらい、大型案件の受注へとつながるようになり、今後の更なる拡大が期待されています。

Challenge Point Challenge Point

目の前のことにベストを尽くす。その経験がつながって、新たなサービスやノウハウが生まれる面白さ

目の前のことにベストを尽くす。その経験がつながって、新たなサービスやノウハウが生まれる面白さ

  • 羽生アーカイブセンター

    羽生アーカイブセンター

  • 冷蔵倉庫 フィルム保管棚

    冷蔵倉庫 フィルム保管棚

  • ICカード認証装置

    ICカード認証装置

  • 羽生アーカイブセンター
  • 冷蔵倉庫 フィルム保管棚
  • ICカード認証装置

アーカイブズ事業のメイン拠点は埼玉県にある羽生アーカイブズです。
事業の拡大に合わせて次々と新しい倉庫を新設。2012年には最新鋭のアーカイブズ対応施設として第2センターが竣工し、2015年には第2期倉庫が完成。東日本大震災以降、津波や地震に備えた耐災害性への関心も高まりました。羽生アーカイブズは水害の恐れが低い内陸に建設されていること、また最新の免震構造と最高レベルの情報セキュリティが評価され、事業拡大に繋がっています。情報技術が進み、ペーパーレス時代と言われていますが、100%のデジタル化・無形化はありえません。その中で私たちは情報記録管理のスペシャリストとなり、安全・安心を提供できる唯一無二の存在になることを目指しています。現在取り組んでいるのは「契約書管理サービス」です。契約書などの重要文書を預かると同時にデータベース化し、現物とネットワークで管理するサービスです。

このビジネスモデルを海外展開する夢を抱いています。

これらを実現するために必要なクラウドシステム、契約書管理の知識、デジタル化や契約書1件毎の原本管理のノウハウなどには、今まで私たちが顧客のニーズに応える中で蓄えられてきた知識や経験が集約して活かされています。目の前の課題を一つひとつこなしているときは、「点」がつながるイメージがわきません。でも、やがてそれらが住友倉庫の新たなサービスになるときが、最高にワクワクする瞬間です。ベストを尽くした積み重ねの「点」が「線」となり、未来につながっていくのだということも学びました。今はまだ国内中心の事業ですが、いつかこのアーカイブズ事業のビジネスモデルを「面」として、海外にも展開していきたいという夢を抱いています。